アスターさんは仕事の幅が広いですよね。住宅リノベだけでなく、店舗やソーシャルなものまで手掛けていて、2023年のリノベーション・オブ・ザ・イヤーで、車までリノベーションしていたのは驚きました。
キャンピングカーをリノベした「動く家」ですね。
自由な発想でいろいろなことをされていますが、どの仕事にも中川さんの美学がちゃんと反映されていて、一本筋が通っていると感じます。
そして私が非常に魅力を感じているのは「インテリアとリノベを融合させた空間づくり」についてです。一般的にリノベとインテリアは別の分野と捉えがちですが、アスターさんの現場はその2つが上手くミックスされている。おそらく中川さんは「インテリアも含めてリノベーション」だと考えているのではないでしょうか?
そうですね。住空間をつくるということは、暮らしを提案するということなので、ぼくは箱よりもむしろ中身(インテリア)が重要だと考えています。床材や壁材ももちろん大事だけど、それ以上に椅子やテーブル、カーテンといった家具が、暮らしの質を左右すると思うんです。
その考え方は、アスターさんのモデルルームに現れていますよね。シンプルな空間の中に洗練された家具が自然に溶け込んでいて、ただのシンプルでカッコいい空間とは違った上質さがあります。空間づくりにおいてどういったことを意識されていますか?
シンプルって実は簡単なようで難しいんですよね。シンプルにすればするほど、細かい部分の質が求められます。床や壁の素材、照明器具、カーテン、ラグなど、ぼくらが思う質の良いものをセレクトしています。
あとは空間デザインの中で「線」をなるべく無くしています。幅の広い床材を使ったり、巾木を無くしたり、部屋に無駄な線を無くすことですっきりとした空間になるんです。
アスターさんは「CONCEPT STORE A.」というインテリアショップも運営されていて、これらの家具もすべて中川さんがセレクトしているんですよね。どういう基準でセレクトしていますか?
セレクトはぼくと知人のインテリアデザイナーさんでやっています。デザインや機能性を重視するのはもちろんですが、ぼくはそこにプラスアルファで「バックボーンのある家具」を選ぶようにしています。
例えば、本来捨てられるはずの廃材でつくられたサイドテーブルや、地元九州の家具作家さんが手仕事でつくった椅子などがそうです。
素材へのこだわりと、中川さんの審美眼でセレクトした家具たちが、シンプルのひと言では片づけられない上質な空間を生み出しているんですね。
私はこれからの時代、皆が「上質なもの」を求めるようになると思うんです。それはバブル時代のような高級感ではなく、自然体でありながら上質なもの。一般の方々にちゃんと手の届く価格で提供される上質なもの。例えるなら、毛皮のコートではなく、良い素材で丁寧につくられた白シャツのようなものです。
そんな世界観がアスターさんのモデルルームにはある。だから今回、中川さんの力をお借りして「これからのプレミアムを体現するモデルルーム」を一緒につくり、皆さんにご提案したいと思ったんです。
ぼくたちがつくる空間をそのように評価してもらえて嬉しいですし、ぼくも山崎さんから多くのことを学べるチャンスだと思ったので、ぜひ一緒にやらせて頂きたいと思いました。
実は福岡で住宅リノベをやるのは今回が初めてなんです。しかも普段はやらない買取再販の物件ということで、我々にとって新しいチャレンジ。とてもワクワクしています。
はぴりの!では定期的に他のリノベ会社さんとコラボレーションをおこなっていますが、アスターさんも過去にタムタムデザインさんなどとコラボされていますよね。
はい。ぼくも積極的にコラボはやっていきたいと考えています。同じリノベ会社でも、それぞれ違うテイストや考え方を持っていて、一緒にやることで新しい発見がありますし、1社だけでは出来ないことってたくさんありますから。
得意不得意は人間にもあるし、会社にもありますよね。得意なことは得意な人がやったほうがいい。それぞれ異なる強みを持った者同士の協業は、大いにやるべきだと私も思います。
ただ、目指すゴールは一緒じゃないとダメですよね。私と中川さんのゴールはお金儲けではない。もちろん会社ですから利益を出すことも大事だけど、「社会にとって良いことをしたい」「中古リノベーションをより多くの人に知ってもらいたい」という共通の想いが我々にはある。
そうですね。ぼくがリノベーション事業をはじめたのも儲かるからではなく、それが社会にとって良いことだからです。ぼくも山崎さんもお金儲けがしたかったら、きっとリノベ事業はやらないと思います。だってリノベは大変だから(笑)。でも大変な分やりがいがあるし、Co2の削減や空き家再生など世の中のためにもなる。だからやっているんですよね。
今回、博多駅近くというアクセスしやすい場所にモデルルームを一緒につくることで、我々の想いや中古リノベの魅力を、広く知ってもらえるんじゃないかな。
福岡の会社と、熊本の会社でコラボしたという事例にもなって、リノベ協議会の仲間たちもきっと感化されると思います。次は福岡と鹿児島でやろうよ!みたいな感じで、エリアを超えた協業が活発になっていけばいいですよね。
今回、はぴりの!が買取再販と施工管理を担当して、アスターさんには設計デザインとインテリアを担当して頂きますが、中川さんはどんなモデルルームをつくりたいですか?
だれもが気兼ねなく過ごせて、かつプレミアム感も感じられる。そんな「今までありそうで無かった」モデルルームにしたいですね。
ホテル風とか、カフェ風とか、そういう何々風な家にはしたくないですよね。
ぼくもスタッフに「何々風はだめよ」とよく言っています。一見それっぽく見えるけど、よく見ると違う。そういうのって心地よくないですよね。内装をやる時はいつも質感にこだわっていて、フェイクではない本物の素材を使うよう心がけています。それが暮らしの心地よさに繋がりますから。
中川さんがどんな素材や家具をセレクトするのか、どんな空間をデザインするのか、とても楽しみです。
着る服や食べる物にこだわりを持っているけど、じゃんじゃんお金を使うわけではなく、ちゃんと自分の目で選んで暮らしている人。良いものに対して価値を見出せる人。そういう人に「これこれ、こういう家が欲しかったんだよ!」と感じてもらえるモデルルームをつくりたいと思いますので、どうぞご期待ください。
2023年12月6日 アスターのモデルルームにて対談
有限会社中川正人商店(アスター)
代表取締役 中川 正太郎
昭和23年に創業した中川正人商店の3代目社長に就任後、畳の卸業からリノベを軸とした会社へとシフトし、リノベブランド「アスター」を立ち上げた。建築とインテリアを融合させたリノベーションを得意としている。インテリアショップ「concept store A.」や、雑貨店「KUHONJI GENERAL STORE」なども運営。タムタムデザインと協業した「球磨川くだり発船場」でリノベーション・オブ・ザ・イヤー2021 総合グランプリ受賞。
株式会社はぴりの
代表取締役 山崎 大亮
2014年12月 会社設立。「無理なく、ムダなく、安心&安全なリノベーション」をモットーにしたリノベーション事業を展開。資金計画から不動産の取得、リノベ工事に至るまで、顧客に寄り添ったワンストップサービスを得意とする。現在、福岡都市圏で年間50件以上のリノベーション工事を受注。パナソニック ハウジングソリューションズやトクラス、リノベエステイトなどとの協業実績も多数。
Model room project #5