マイホーム探しをされている皆さまとの会話で、特に多いのが「マンションは、築何年までなら住めますか?」というご質問です。
大きな視点で分けると、3つの回答があります。
1つ目は、コンクリートなどの強度面から見た「建築物」としての物理的寿命です。この視点だけであれば、メンテナンスさえ丁寧に行えば100年以上の使用が可能でしょう。ただし、配管や配電などの劣化には適宜対応が必要ですし、時代と共に必要な新しい設備(インターネットやEV用の充電設備など)がそもそも欠けていることも事実です。ですので「100年は持ちますよ!」と言っている専門家がいるとすれば、構造物としての耐用年数を言っているものと思われます。
続いて、銀行や行政機関は「帳簿上の価値=寿命」で見ています。例えば、鉄骨造であれば34年、鉄筋コンクリート造であれば47年と定めていますが、これはあくまで「法定耐用年数」のことです。つまり、国税庁が「帳簿上において無価値にするまでの期間」を指しているに過ぎません。例えば、大濠や薬院エリアなど、人気エリアにあるビルが「築50年経っているから」と言って、無価値にはなりませんよね。あくまで、会計処理上の見方なので「築何年住めるか?」という視点とは無関係です。
最後に、私たちが一番大切に考えている「安心と安全」をベースにした「家族が住む場所として、築何年くらいまでなら大丈夫か?」という現実的な視点があります。ただし、この答えは上記2つのように歯切れ良い回答はできません。なぜなら、建物一棟ずつで状況が異なるからです。その状況とは、主に2点を指します。
1つ目は、多くの方がお気づきのように「管理状況」です。マンションを「安心した暮らしの場」として長く維持していくためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。そのために必要なのが修繕金であり、指標となる長期修繕計画です。きちんとメンテナンスしている物件と、そうでない物件では傷み具合が全く違いますし、どれだけの期間住めるのかにも大きく影響します。
今回は、例として「適切に管理されている(修繕金が適正=安過ぎない)物件」を元に考えてみましょう。全50戸くらいの標準サイズのマンションであれば、大規模修繕はおおよそ18年に1回程度と言われています。
このペースできちんと大規模修繕が実施されているマンションでも、たぶん築60年くらいから「将来の話」が出てくるのではないかと予想されます。ちなみに、将来の展開として考えられるのは4案です。A案は次の大規模修繕も実施し、さらに20年くらい使えるよう整備する。B案は(追加販売する住戸分の収益も含めて)建て替えを計画する。C案はマンション全体を売却し、持分に応じて入居者が現金を山分けにする。D案は(これを案と言えるかは別として)そのまま放置する。
ちなみに選択肢A~Cは、入居者の多くがマンションを大切にしていて、必要な修繕積立金をきちんと貯めている場合に限って実現可能です。修繕金の見直し(値上げ)を怠っていたり、一部の新築や投資向けマンションのように修繕金を極端に安くしている物件などは、そもそもメンテナンスが行き届いていないので論外です。
さて、その上で理想的な選択肢としてはBの建て替え、もしくはCの現金受け取りとなりそうですが、ここでポイントとなるのが2つ目の状況である「立地」です。
そもそも、マンションという建築物は「狭い土地に、たくさんの人が住むために作られた建造物」です。そのため、将来時点でも「希少価値がある立地」で「次の世代がこれからも住みたい立地」でなければ、再活用に協力する事業者はあらわれません。もちろん、近隣に同じサイズのマンションを建てられるくらいの空き地がある場合は、デペロッパーは面倒な再開発より、近隣に新築マンションを建てるはず。つまり、人気のある土地でなければBやCのような選択肢はそもそも存在しないのです。
東京に代表されるような超都心では、今後は建て替えが進む可能性が大いにありますが、ローカルなエリア、つまり近隣に田畑が残っているような立地では「建て替え or 更地にして販売」などは実現性が低いと考えるのが妥当でしょう。
福岡は全国レベルでも元気がある都市ですが、それでも都心部から離れたローカル駅(どう言った駅を指すのか…が気になる方は、当社イベントでお聞きください)から「歩くのはちょっときついなぁ」という立地のマンションは、将来的に価値が維持できるかは微妙です。
さらに、管理状況や立地だけでなく、マンションの規模や建ぺい率、容積率などの状況も含めて、各物件が「将来的にも価値があるのか、無価値となる=負動産となるか」は、正直なところ個別に判断するしかありません。
車でもオーダーメイドの洋服でも、ネットで簡単に見積りができる時代です。マイホーム選びでも「簡単に正解を知りたくなる」気持ちは理解できるのですが、実際は現地を見て、資料を見て、どういったリスクがあるのかを理解した上で、自分自身の財務状況も踏まえて判断するしかありません。
不安症な方からは「だったら、やっぱり新築を」と言われることもありますが、そもそも新築は中古と比べて1.5倍から2倍の支払いになることが多いので、多額な借入自体がリスクと言えます。また、竣工していない建物の場合、実際に杭打ちなどが適切に行われているかを調べる術はありません。JR九州が販売した「ベルヴィ香椎6番館」に関する建て替えまでの一連の報道を、改めて確認してみてください。
それならば「一生賃貸」という選択肢がベストかと言うと、インフレの時代となり不安は高まっています。また、退職後に「生活の場」が不安定なことは、ある意味最大のリスクかもしれません。
それでも中古+リノベが「マイホーム選びの最適解である」と言うつもりはありません。新築でも中古でも、戸建でもマンションでも、正しい情報に基づいて一つずつ検証し、現場と現実をしっかり見つめることしか解決法はありません。
だからこそ「何年住めるのか」についても、物件ごとにしっかり考えるべきですし、さらに、購入者の年齢や所得も含めて「その物件を購入していいか」を判断すべきではないでしょうか。
さらに詳しいご説明は、当社の「初めてのマイホーム探し&リノベーション相談会」にご参加ください。マイホーム探しのご相談についても、リノベーションのご相談についても、経験豊富なスタッフが丁寧に解説させていただきます。