Enjoy at Home vol.15
躯体を活かした
経年変化を楽しむ家
2023.06.12
- photo : Norito Nagatomo
Enjoy at Home vol.15
2023.06.12
これからの暮らしの在り方を先取りした実例をご紹介する Enjoy at Home プロジェクト。今回は福岡に移住してから4年になるSさんが、築44年の中古マンションをフルリノベーションしたお宅をご紹介。天井と壁のほとんどを躯体現しにし、カッコ良さを追求した「男のロマンが詰まった家」になっています。
▲リノベ前は3LDKの間取りだったが、ほとんどの壁を無くして開放的なワンルームへと変更した。
──
Sさんが家を買おうと思ったきっかけを教えていただけますか?
Sさん
以前は賃貸の気軽さを好んでいましたが、
転職を機に仕事がほぼリモートワークになって、
1日のほとんどを家で過ごすようになったんです。
それで「住環境の質を上げたい」と
思うようになったのがきっかけです。
いま自分が40歳で、住宅ローンを組むなら
今だなというのもありましたね。
──
はじめから「中古リノベ」と決めていたのでしょうか?
Sさん
そうですね。中古リノベ一択でした。
新築マンションだと賃貸と一緒で
自由に手入れが出来ないですよね。
自分の好きな空間にしたかったので、
最初から中古リノベしか頭になかったです。
中古マンションをセルフリノベした友人の影響も大きくて、
その家が躯体現しでめちゃくちゃカッコ良かったんです。
自分もいつか家を買うなら
こんな風にしたいなと思っていました。
──
リノベ会社はどうやって選びましたか?
Sさん
ワンストップ対応の会社から選びました。
まずは他社さんに話を聞いたのですが、
そこでは普通にリノベの話で終わりました。
次にはぴりのさんを訪ねたところ
「いま家賃いくら払ってますか?」
「月々いくらまでなら払えますか?」
という超現実的なお金の話からスタートしたんです。
「いくら理想の家をつくりあげても、
日々の暮らしがキツかったら意味が無い」
という言葉がすごく腑に落ちて、
はぴりのさんにお願いすることを決めました。
▲自転車も余裕で置ける広々とした玄関土間。
▲オークションで購入した年代物のスチール製ロッカーをシューズボックスとして使っている。
▲ワークスペースにはL字型デスクを配置。モルタル製の腰壁が玄関とワークスペースの境界の役割を果たしている。
▲基本的に在宅で仕事をしているSさん。「好きな空間だと仕事もはかどります」
▲ほとんどの壁を躯体現しにしているが、隣室に接する面だけ防音のために壁をつくった。
──
物件の購入を決めるのが、とても早かったそうですね。
Sさん
そうなんです。
夜中に不動産サイトを見ていて、
価格も立地も抜群のこの物件を見つけ、
翌日のお昼にはぴりのさんにLINEしたんです。
すると「ここはすぐに買われそうだから
今日これから見に行きましょう」と言われ、
その日の夕方に一緒に内覧して、
その場で購入を決めました。
ネットで見つけてからわずか
15時間足らずの出来事でした(笑)
──
すごいスピード感ですね。
Sさん
自分が「ここだ!」と思ったのが一番ですが、
これまで星の数ほど物件を見てきた
はぴりのさんの意見を聞けたのも、
即断できた大きな要因です。
リノベのプロでもあるから、
その場で「この壁は壊せる、壊せない」
という空間づくりの話も出来て
リノベ後のイメージが一気に膨らみました。
▲床材をグレーにしたことで躯体との調和が生まれ、重たすぎない洗練された空間に仕上がった。
▲躯体には一切塗装はせず、ボンド跡もそのまま残した。まるで時間が創り出したアートのようだ。
▲「解体してどんな状態の躯体が出てきても、ありのまま受け入れることを決めていました」と話すSさん。
▲窓の木枠もそのまま残した。工事現場の監督さんは「本当に外さなくていいの?」と驚いていたそう。
▲「土間のクラックがまた良いでしょう」と話すSさんから、経年変化を心から楽しんでいることが伝わってくる。
▲スイッチ類も抜かりなく、インダストリアルな世界観で統一した。
──
剥き出しのコンクリートが目を引く、
とてもカッコいい家に仕上がりましたね。
Sさん
躯体現しと、壁のないワンルームの間取り。
それが最初に決めたテーマでした。
プランナーの吉田さん(はぴりの)から
「解体してみないとどんな躯体が出るかわからない」
と言われましたが、どんなに
ヒドイ状態の躯体が出てきても、
ありのまま受け入れると決めていました。
ボンドの跡も、刺さったままのクギも、
全てそのまま残してもらっています。
だって44年かけないと、この質感は
手に入らないわけでしょう?
手で触ったらボロボロと剥がれたり、
崩れそうな箇所もありますがそれが良いんです。
どの壁も表情豊かで、見るたびに発見があります。
吉田さんもそんな僕の好みを理解してくれて、
「男のロマンを追求しましょう!」と一緒に楽しみながら
家づくりに取り組んでくれました。
──
非常に統一感のある空間になっていますが、
家具や家電はどういう基準で選んだのでしょうか?
Sさん
これはあくまで自分の意見ですが、
カッコいいと感じられる空間には
ちゃんとルールが存在するように思います。
この家も「色は白・黒・グレー・茶に絞る」
「インダストリアルなアイテムで揃える」
といったマイルールを設けて
部屋の中を組み立てていきました。
感覚ではなくロジックですね。
ここには古い物も新しい物も混在していて、
中にはIKEAや無印の製品もありますが、
色と素材をちゃんと合わせたおかげで
統一感のある家になったと思います。
▲日当たりの良い場所にあるキッチン&ダイニングスペース。空間を広く使うためキッチンは壁付けにした。
▲料理好きのSさんが選んだのはステンレス製のキッチン。「飲食店の厨房をイメージしました」
▲洗濯物は乾燥機から取り出してそのままWICのハンガーへ。
▲ウォークインクローゼットに扉はつけず、機動性と換気を良くした。
▲トイレ・洗面スペースにのみ、この部屋唯一のドアを設置。スライド式で鍵付きのオーダーメイド製品だ。
▲「構造上広さを変えられなかった浴室が唯一の妥協点です」とSさん。それでも浴槽はステンレス製のオーダーメイドというこだわりよう。
▲トイレ・洗面スペースは、白とグレーのツートーンでシンプルにまとめた。
──
実際にこの家に暮らしてみていかがですか?
Sさん
最高です。仕事の時もテンションが上がりますし、
夜ベッドに入った瞬間、部屋全体が視界にひろがり
「この家に住めてよかった」と心から思います。
全てに自分の「好き」が詰まっていて、
出来栄えは100点満点です。
きっと自分のように単身者のほうが
こだわった家づくりはしやすいと思います。
ファミリーだとなかなかここまで
ヤンチャ出来ないですよね(笑)
「家は一生に一度の買い物ではない」と
はぴりのさんに教えてもらったので、
僕もこの家に一生住むつもりはありません。
5年後なのか、10年後なのか、
まだ先のことは分かりませんが、
自分の人生の変化に合わせて
住み替えていくと思います。
次もきっと中古リノベだから、
その時はもう少し広い家にして、
好きなモノを壁一面に陳列できる
アトリエ部屋を作りたいなと思っています。
はぴりのスタッフ
家選びでもリノベでも、「感情と理論」のバランスがとても大切なんです。
「感情」が強すぎると悩みが増し、現実を受け入れることができません。逆に「理論」が先行すると、マイホームとして暮らす際の満足度が下がります。
本宅のオーナーSさんは、そのバランスの取り方にブレがなかったからこそ、満足度の高い家を手に入れることができたのだと思います。
家選びだけでなく、仕事でもプライベートでも、自分自身を「客観視」できる力を身につけることの大切さを、私たちもSさんに学ばせていただきました。