新築ではなく、リノベーションを選ばれる方が好きなテイストの一つに「躯体表し」があります。店舗デザインでは昔から取り入れられていた手法ですが、個人宅でもこの10年くらいで一般化してきました。
無機質なコンクリートや鉄管などを見せることで、生活感の少ない、カッコいい暮らしの場を実現することができるため、常に一定のニーズがあるデザインです。
あくまで「見せる」デザインですので、実用性よりも趣味的な仕上げと言えますが、こういう空間に憧れる男性は少なくないと思います。最近では、新築でもラフな仕上げのままで販売されている物件もあるほどです。
さて、今回の物件ですが、実は「未完成」のままでお客さまに引き渡す予定となっています。もちろん、工事に不備があったのではなく、お客さまとしっかり打ち合わせした上での「正しい引き渡し」です。
さて、どこが「未完成」なのか、皆さまは下の写真を見て気づかれますか?
そうなんです。クロスを貼っていない状態で、お引き渡しをするお宅なんです。
ですが、実はそれも正確ではありません。より正しい答えは「塗装前に引き渡し予定のお宅」ということになります。
なんなら「このままでもいい」という声が聞こえてきそうですが、実際はクロス仕上げ以上に塗装は大変な作業です。まずしっかりマスキングをして、塗料が想定外の箇所につかないよう事前処置が大変ですし、クロスを貼る時以上に下地処理には配慮が必要です。
さらに、工期もクロス貼りの時より長く必要ですし(下塗りから本塗りにかけて、何度か塗ったり乾かしたりする時間が必要なため)、その分人件費を含めたトータルコストもアップします。
そういった下地処理を当社が工事業者として実施した上で、実際の塗装は「お引き渡し後」にご自身でされる予定になっています。マイホーム作りの最終段階として、楽しいけれど、同時にかなり疲れる時間だろうと思います。
ただし、ご注意いただきたいのは、この選択が「コストカットではない」という点です。価格を抑えるためであれば、間違いなくクロス仕上げの方が安いでしょう。DIYの本には「躯体表しや塗装で安く仕上げた」と書かれている場合もありますが、プロの感覚としては「同じクオリティであれば、それは無理だろう」と感じます。
躯体表しとはいえ、基本的には「住める家」にするための工事は必要です。例えば、躯体表しだからこそ、電気の配線などを露出タイプの鉄管を使うことで、材料費も工賃もアップします。また、躯体自体から出ている釘や廃材などの撤去も必要ですし、ボードと既存壁の間に隙間が生まれたりもします。
そういったメリットとデメリットを並列で考えた上で、金額が安いからではなく、自分が好きだからこそ「躯体表し」や「塗装」を選択されることはありだと思います。
すでに「塗装前」の状態でこんなに魅力的なお宅ですので、完成後にオンリーワンのマイホームになることは間違いありません。
お客さま自身の作業が完成後、また写真撮影をさせていただきたいと考えています。大変だろうと思いますが、塗装作業頑張ってください。応援しています!