今回施工例に追加したのは、築50年の団地リノベです。ご存知の方も多いと思いますが、団地は構造的な理由で大胆な間取り変更はできません。しかし、大胆に間取りを変えなくても「ゆとりある暮らし」は実現可能です。そのための工夫と、そもそも「どうして団地リノベは自由度が低いのか」を改めてお伝えしたいと思います。
最初のポイントは、色使いを統一したことです。天井、壁紙、キッチン、建具まで、同系色の白で統一。また、家具もシンプルで背の高いものを置いていないため、空間全体が広く感じられます。リビングとダイニングの間には構造壁と大きな梁がありましたが、そこを弱点ではなくデザインと捉えたことで、お気に入りの「額縁」が実現しました。
リビングの隣には和室を残し、ゴロンとくつろげるスペースに。将来、畳スペースは育児の際に重宝しそうです。さらに、主寝室と和室の間にはご主人のワークスペースを確保。ほどよくセパレートされた空間で、仕事もはかどりそうです。バルコニーに面した洋室は、将来の子ども部屋ですが、当面は奥さまの趣味部屋として使われる予定。今後ご家族が増えたとしても、十分ゆとりのある生活が送れそうです。
また、団地などの築古物件は水回り空間が狭いのですが、今回は洗濯機置き場を大胆に移動することで問題を解決。洗面と脱衣スペースも、十分な広さが確保できました。
おしゃれな空間の実現とともに、大事にしたいのがコストコントロールです。洗面スペースの入り口だけでなく、主寝室や和室の収納部には建具を使用せず、目隠しを兼ねたカーテンを付けています。部屋ごとにデザインの異なるカーテンがインテリアにもなっており、ご夫婦が楽しみながら部屋づくりをしていることが垣間見えます。もちろん、簡単に交換もできるので、模様替えを楽しむことも可能です。
そもそも、団地に限らず築年数が古い低層マンションでは「壁式構造」が多く採用されています。壁式構造とは、壁自体の強度で上下階を支えている構造のことです。壁自体が鉄筋コンクリートで作られているので、耐震性能がきちんと確保されています。しかし、デメリットとして、宅内壁の一部が解体できないため、どうしても間取り変更は限定されてしまいます。
※詳しく知りたい方は、こちらのブログもご覧ください → 【ワンストップで考える_23】ラーメン構造と壁式構造
リノベーションをお考えの方にとって、間取りの変更は醍醐味のひとつと言えます。しかし、壁式構造の団地を選べば、物件価格自体を低く抑えられるメリットがあります。間取りに制限はあるものの、今回のお宅のように十分に「いまの時代にあったワクワクする暮らしの場」を実現することは可能です。マイホームづくりのポイントは、全体予算の中で「何を優先するのか」をきちんと考えることです。
どの物件にも、そしてどんな工法や設備にも、それぞれメリットとデメリットがあります。それらを正しく理解しつつも、大切にしたいのは「リノベーションを楽しむこと」です。コスト的にも無理をせず、その上で「自分たちらしい理想の家を実現すること」の考え方を再認識できました。
※ 施工例のページには、リノベ前の図面やその他の情報も記載しています。