築古マンションでは、エアコンが技術的に設置できない部屋があります。いまでは各部屋1台が当たり前の時代となりましたが、そもそも30年以上前は「エアコン=贅沢品」でしたので、設置できなくても問題なかったわけです。
エアコンの仕組みを簡単に説明しておくと、冷媒と呼ばれるガスが室外機と室内機の間を廻って「熱」を運ぶ仕組みを利用し、室内に冷たい風や温かい風を出す空調機器です。そのために電気が必要なことはもちろんですが、室外機と室内機の間を結ぶ冷媒管と、室内機から出される水を放出するためのドレン管(ドレンホース)が必要となってきます。
現在はエアコン本体の価格が下がったことや、社会全体が猛暑化していることもあり、ほとんどの居室へのエアコン設置は当たり前となりました。
しかし、築年数を経たマンションによってはそもそも壁に配管を通す穴(コア)が空いていなかったり、物理的に室外機置き場がない部屋も多数あります。このような課題は単に生活面で不便と言うだけでなく、中古不動産の「価値」という面においても課題となっています。
特に、バルコニーと接していない中部屋(多くの場合は和室)や共用廊下側の部屋で、エアコン設置が難しい場合が散見されます。その解決策として、近年リノベや再販物件で提案されているのが、バルコニーから室内機までの配管を見えないように壁の中に設置する「先行配管(隠ぺい配管)」方式です。
一見すると便利な解決法に見えますが、実は先行配管にはリスクもあります。代表的なものは、壁の中に設置した配管内にトラブルが発生した際のメンテナンスが難しいことや、冷媒管の距離が長くなることでエアコンの効きが悪くなる可能性があることです。また、選定されるエアコンの機種によってはそもそも設置できない場合があったり、家電量販店によっては先行配管のエアコンは「設置不可」と言われる場合もあるようです。
実際のところ当社でも多数の設置実績はありますが、上記のような「リスク」をお客さまに伝えた上で、先行配管は検討されるべき手法と考えています。こういうご案内こそ、私たちが考える「安心と安全」の大事なポイントです。
それから、基本的には「コア(穴)がない場所に、コアを開けること」自体も推奨していません。技術的にそれほど難しくはありませんが、まずは管理組合の許可が必要ですし、許可が出たとしても構造体を傷つけた際のリスクを誰が負うのかについても、きちんと協議する必要があるからです。
こういったリスクを伝えずに工事を行なっている事業者も多く存在しますが、私たちは福岡都市圏で数多くのリノベーションを担っているからこそ、お客さまへ「メリットとデメリット」をしっかりお伝えする責務があると考えています。
リノベーションはおしゃれな暮らしを実現する手段であることはもちろんですが、それよりも大切なのは「安心と安全」です。より詳しい説明を聞かれたい方は、当社リノベ部のスタッフにお問い合わせください。