通常、設計者が間取りを検討する際は「平面(二次元)+高さ」で考えます。そこに「時間軸」を加味した考え方を「4D設計」と呼んでいます。特に不動産価格が高騰している都心部では、コスパの面でとても有効な考え方です。
郊外ではそれほど差はありませんが、都心部の不動産価格は広さと正比例します。日当たりなどがほぼ変わらないマンションの場合、85㎡で3,500万円の部屋では、68㎡では2,800万円となります。さらに、改装費も狭い方が安く済みます。リノベ工事の平米単価150,000円の場合、85㎡では工事費(消費税を含む)は1,400万円、68㎡では1,120万円です。
実は、これだけで総額1,000万円くらいの差がつきます。月々の支払いに換算すると26,399円の違いです。
お金の話はこのくらいにして、続いては「4D設計」についてもう少し詳しく解説していきましょう。キーワードは「時間軸」です。特に、子どもの年齢によって「必要な個室数」が変化することに気づかされます。
その中でも新築戸建を検討されている方にお伝えしたいのが、実家にある「ご自身の部屋」の現在の姿です。戸建では2階が子ども部屋というスタイルが一般的ですが、いまでは単なる「物置」と化し、ご両親にとっても「掃除だけが必要な未使用の部屋」となっていないでしょうか。
ちなみに、その部屋を使った期間が中学1年から高校3年までの場合、35年の住宅ローン支払い期間のうち、わずか6年しか活用していません。残りの29年のことを考えたら、本当にその部屋は必要だったんでしょうか。もちろん、その分のコストを支払いながらマイホームを購入されている訳です。
つまり、4D設計が目指すマイホームとは「長期的視点での必要な部屋数を考え、それぞれの時期に無理のない暮らしができる空間づくり」と言い変えることが出来ます。
アメリカやヨーロッパと違い、日本では子どもが小さな間は親子で一緒に寝ることが一般的です。上記イラストを見ていただきたいのですが、例えば(A)の時期には親子4人が1室で就寝します。そのためには8畳以上の広いお部屋が必要で、逆に子ども部屋が2室あっても使われることはありません。
続いて(B)の時期に入ると、思春期となった長男に個室が必要となります。それでも、まだ完全な個室ではなく、ゆるやかに区切られた空間でも良いかもしれません。さらに時間が進んで(C)の時期になると、やっと子ども部屋が2室必要となります。マイホーム購入後、すでに11年が経過している訳です。ここから数年がもっとも混雑する時期ですが、それでも年数で言うと6年程度でしょう。
なぜなら(D)の時期になると、長男が就職して実家を出る、または長女が高校を卒業して遠方で一人暮らしを始める…というように、大きな変化が訪れる時期だからです。そうすると、当然のことながら必要な子ども部屋数は減少します。それ以降は、子どもが帰省した時に泊まれる空間が必要ですが、極論すると近隣にホテルがあればいい訳です。
もちろん、それ以降は夫婦2人暮らしとなるのですが、このくらいの時期になると住宅設備が交換時期を迎えていることもあり、再リノベの適齢期がやってきます。4D設計の思想に基づいてコンパクトな68㎡の家を選んだ方であれば、85㎡の家を買った方と比べて1,000万円近く資金に余裕があるはずですから、きっと再リノベも可能です。
建築費だけでなく、不動産価格も高騰を続けています。社会全体で人口が減少し、インフレが進む時代だからこそ、利便性の良い場所にあるコンパクトな家の価値が高まっています。4D設計を理解し、物件費や工事費のトータルコストを抑えることが、未来の「安心と安全」につながるのではないでしょうか。
そんな暮らしを体感できるよう、次のモデルルームでは「4D設計」に基づいたプランニングにチャレンジしています。11月初旬の完成に向けて、現在工事が進捗中です。どうぞお楽しみに。