このシリーズ(ワンストップで考える)の第37回でもご紹介した「リノベ費用のポイント」ですが、お客さまから「もう少し具体的に住宅設備の金額が決まる仕組みを知りたい」というお声をいただきました。
まず大前提として、リフォームやリノベの費用は工賃と資材費、その他の3種類に分けられます。今回は資材費の中でも、お客さまの選定によって大きく金額が変化する住宅設備の仕組みについて深掘りしていきましょう。
ネットで比較しながら買い物することが普通の現代においては、キッチンなど住宅設備の価格決定の仕組みは正直わかりにくいものだと思います。だからこそ、そもそもの「仕組み」をご説明しておきます。
そもそも、設備の源流はメーカーですが、実はメーカーと工務店(リフォーム会社)が直接取引をしているわけではないんです。両者の間には、問屋や商流と言われる中間業者が存在します。つい「中間業者」と聞くと、ビジネスの真ん中でマージンだけを取る不要な存在を想像しがちですが、実は世界のビジネスモデルでも一般的な存在です。
規模の大きな会社としては三井物産や三菱商事などの総合商社も広義では中間業者ですし、テレビ局と広告主の間でビジネスを円滑に進める電通や博報堂などの広告会社も中間業者と言えるでしょう。多くの方に身近な存在だと、飲食店が食材やお酒の納入を手配するときも、問屋(中間業者)の存在なしに日々の営業は成り立ちません。
それらの中間業者は受発注の取りまとめや価格調整だけでなく、商機拡大に結びつく情報や企画の提供など、商品や事業の付加価値を高めてくれる存在でもあります。建設業界(特に工務店やリフォーム会社)において、問屋(商流)は現場までの物流を担ってくれるパートナーであるだけでなく、さまざまなメーカーと取引を開始(口座を開設)する手間や、決済の負担を軽減してくれるサポーターでもあります。
ですので「問屋や商流の存在は、価格が不明瞭と感じる原因ではない」という現実に即した上で、さらに「どうして、住宅設備の金額が分かりにくいのか」を掘り下げていきます。
※ もちろん、メーカーや問屋、工務店の力関係及び日頃の取引量によって、設備の仕入れ価格は上下します。また、工務店も各社ごとの戦略によって利益幅を調整しますので、それらを踏まえた差は生じます。
一つ目は、すでにお気づきの通り「工賃」の存在です。スーパーやコンビニで売られている商品との大きな違いは「設備代金+工賃」が最終的な「合計額」だという点です。しかも、工賃はどんな現場によるか、またその会社の設定次第で変動幅が大きいため、なおさら分かりにくく感じてしまう訳です。
見積り上では住宅設備本体の金額が一番安い会社でも、工賃が高いと結果的には最安とは言えません。逆に工賃が安過ぎるようだと、工事内容に「他社と比べてダウングレードした点=将来の安心や安全性の減少がないのか」が気になります。
つまり住宅設備の選定時には、家電のように「価格のみで比較すべきではない」のが正解です。ご存知の方もおられると思いますが、公共工事の入札で「もっとも高い金額と、もっとも安い金額は除外した中から選定する」という場合もあります。なにごとも「相場感」から外れる場合、一定のリスクが潜んでいると考えるべきです。
逆に言えば、家電のように「すでに完成している製品」を購入するのであれば、単純な価格比較にも意味はあります。ですが、その製品単体では成り立たない「サービスを加えた労務の提供」を受ける場合、製品とサービスのトータルバランスが大切です。
ちなみに、冒頭に書いた「その他」という費用には、アスベスト検査費や工事後の清掃費用など工事に関わる周辺業務だけでなく、デザインや設計に関する費用、工事現場で必要となる駐車場の費用や現場スタッフの移動費なども含まれています。リフォーム会社もリノベーション会社も営利企業ですので、各社の利益を含めた額がお客さまに提出する見積り額となります。
もちろん、当社では「お客さまの立場で、コスパに優れた製品を選定すること」を重視していますので「できるだけ価格は安いほうが良い」という基本原則はあります。しかし、だからこそ「製品価格」だけでなく、現場の確認力、プランニング、工事内容、工事費を含む見積額、アフターサービスなども含めて「長期的な視点を持って判断することが大切だ」と考えています。
ここまでが、住宅設備の価格がわかりにくい「第一の理由」です。もう一つ、大きな理由があるのですが、それについては次回(6月12日に掲載予定)の「ワンストップで考える」でお伝えさせていただきます。